株について1から勉強するブログ

理系職サラリーマンの独学経路の記録。先生は本(だいたい図書館)とネット。

会計編5:損益計算書

BSに引き続き・・

さて、貸借対照表(BS)に引き続き、損益計算書(PL)を見てみよう。前回エヌ・ティ・ティ・ドコモ[9437] - 決算書(財務諸表) | Ullet(ユーレット)から資料を拝借したが、PLがちょっと粗すぎたので、今回は銘柄情報-9437:NTTドコモから資料を拝借する。
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これは逆に細かすぎる気もするが、しかもよく見ると2011年・2012年の売上総利益がゼロになっており不思議なのだが*1、今回は説明のため2010年の数字をピックアップすると、以下のようになる。

売上高 4,284,404 (収益)
売上原価 2,300,283 (費用)
売上総利益 1,984,121 (差額)
販売費・一般管理費 1,149,876 (費用)
営業利益 834,245 (差額)
受取利息・配当金 5,941 (収益)
支払利息・割引料 5,061 (費用)
営業外損益収支 1,912 (差額小計)
経常利益 836,157 (差額)
特別損益収支 0 (費用)
税引前利益 836,157 (差額)
支払税金合計 338,197 (費用)
少数株主損益 2,327 (費用)
持分法投資損益 -852 (費用)
当期純利益 494,781 (差額)
支払配当金 208,799

単位は100万円。では、見ながらPLについて説明していこう。

記入の順番

まずPLは複式簿記形式ではない。というのは、費用と収益を記載する際にこれらがバランスしないためである。費用と収益が同額になるということは、プラスマイナスゼロになるため、利益が出ていないことになる。普通はそのようなことはなく、費用と収益の差額が利益または損失(損益)になる。収益と費用を縦に一列で並べて、随時足し引きしながら損益を計算しているのだ。よって、上が大元の収益(売上高)であり、下に行くほど細かい費用(税金など)が差っ引かれ、最終的に「当期純利益」という会社に残る利益が計算されている。よってまずは上から順に見たい。

売上総利益

売上高というのが会社が得た収益で、売上原価はそれに対応する費用を表し、その差額が売上総利益である。注意したいのは、売上原価はあくまで売上に直接的に寄与した原価を表している点である。たとえば商品を100個仕入れて10個しか売れなかった場合、売上高が10個分になるのは当然だが、売上原価も10個分になる。残りの90個分は前回説明したとおり棚卸資産として資産扱いになりBSに記載される。減価償却も同様で、売上原価に設備投資費用を全額載せるのではなく、売上に寄与した分だけ(分割して)載せるのだ。ただし設備投資の場合は原価が商品在庫と違って直接的に計算できないため、5年などの期間で定額や定率などで割り引いて計算する。これが費用収益対応の原則である。

営業利益

営業利益は、売上総利益から「販売費・一般管理費」を引くことで計算される。たとえば経理の事務員の給料のように、売上に間接的に寄与する原価を「販売費・一般管理費」として扱う。この営業利益が、1年間での主要事業による利益と考えればよい。

経常利益

企業は主要事業による売上以外を持つことが有る。たとえばビルを持っていて賃料を取っていたとか、株を売買して利益を得たとか。それらの収益を「受取利息・配当金」、費用を「支払利息・割引料」といい、これらの差額を「営業外損益収支」という。ここでいう「営業」というのは「主要事業」と考えてほしい。営業利益に対して、この営業外損益収支を加えたものを経常利益と呼ぶ。

当期純利益

少し飛ばして、当期純利益を説明する。これは、経常利益から雑費(税金や保有株の配当など)を足し引きした結果の、実際の利益を表すものである。重要なのは、この当期純利益がBSの資本の部(純資産の部)に「利益余剰金」として記載されるという点である。これによりPLとBSが繋がっている。

その他

説明を省いた箇所、すなわち経常利益から下は、企業分析にはあまり関わらないものと思って良い。
たとえば特別損益収支は、天災などで損失を受けた場合や、過去の収支報告に誤りがあった際の調整などで使われる。また、税金などの項目については税効果会計という仕組みの都合で記載される箇所であり、課税額を正しく計算するための調整をしているだけだ。よって、あまり気にしないで良い。

PLから分かること

では、以上のパラメータから何が分かるか。
BSからは企業の安定性が分かった。PLからは、企業の収益性が分かる。収益性というのは、ある期間内に企業がお金を増やす力のことである。サラリーマンならわかると思うが、これは投資対効果のことである。いくら投資すれば、いくらになって返ってくるか、ということなので、投資家としては利率と同じものだと考えて良い。
収益性を評価する方法だが、実はPLの考察方法は無数にあると思って良い。というのは、PLには売上総利益、営業利益、経常利益の3つが載っているが、それぞれ商売の繁盛具合、間接部門も含めた会社全体としての繁盛具合、主要事業以外での損得も含めた繁盛具合を指しており、どれを重視するかは投資家の自由なのである。
また投資対効果を考えるにあたって、効果はPL(前述の3つなど)を見るとして、投資はPLの売上原価か、あるいはBSの項目(総資産、純資産、純資産+固定負債など、つまり企業に預けられた資金)を見ることになる。これも、なにを使うかは投資家の自由である。
とはいえ、一般的に使われる指標はおよそ決まっており、略称もよく使われる。今回はROAROE、EPS、PERについて説明する。

予め断っておくが、私はこれらの指標の具体的な使い道については現時点ではイマイチよくわかっていない。ので、本で得た知識+自分なりの解釈で分かる範囲の話を書くことになるが、誤りなどあるかもしれないのでご了承頂きたい。

ROA(Return On Asset:総資本経常利益率

全資産に対する経常利益(=会社の利益)の割合。会社そのものの投資対効果を示す。当然高いほうが良い。これが10年ものの国債の利率などと比べて低いようであれば、その会社は自分で事業をするよりも国債を買うほうがお得ということなので、存在意義がない*2。すでに有る会社についてはどうしようもないが、たとえば事業を起こす際にはROA - EDIUNET 業種平均ランキングなどを参考に、各業界のROAを知っておくと良いのではないかと思う。国債を買ったほうがマシかもしれない。
ちなみに、ROAに売上高を挟むことで、もう少し違った視点での考察もできる。以下のような指標を使う。

売上高経常利益率は、より純粋な利益率である。簡単にいえば主要事業以外(経常利益)と主要事業(売上高)を比べた数字である。細かく調査するにはPLの各項目の数字を見なければなんとも言えない。たとえば売上総利益が高いのに営業利益が低ければ間接部門が重たいのだろうし、営業利益が高いのに経常利益が低ければ借金の利息払いが多いとか資産運用で失敗したとか、何らかの原因があると考えられる。
総資本回転率は、調達・投資・回収のサイクルの速さを表す。回転率が1ということは1年で1回転、つまり調達したお金(総資本)と同額の回収(売上)があった、ということを表す。
ROAをこの2つに分解することで、ROAが高い・低い原因がどちらにあるのか考察することができる。株を買う際に複数社を比較するなら、ROAだけでなく、この2つも比較すると良いだろう。

ROE(Return On Equity:株主資本当期利益率)

株主資本(純資産の部)に対する当期純利益の割合。なぜ税引き後の当期純利益の割合に注目しているかというと、株主の配当額を左右するパラメータだからである。…というと少し語弊があるのだが、考え方としては分かりやすいと思う。つまり、ROEは株主視点での投資対効果を表している。ただし配当の大小はROEでは見れない。当期純利益が全て配当されるわけはないのだから、当たり前だ。配当額は基本的には株主総会で決まる。
ROEについて、注意すべき点がひとつある。それは、負債を増やせばROEを上げられるということである。企業の総資本が増えれば利益が増えるという前提が必要だが、総資本=負債+自己資本(純資産)であるため、自己資本を固定して負債を増やせば、総資本は増える。総資本が増えるということは利益が増える。よって、ROEの分母が固定で分子が増えることになり、ROEが上がるのである。しかし負債には返さなければいけないという難点がある。しかも利子が必要になる。もし不景気で負債の増額に対して利益が増えなかった場合、重荷になってしまうのである。
よって、ROE前回説明した自己資本比率と併せて見た方が良い。

EPS(Earnings Per Shares:一株当たり利益)

EPSは、ROEと同じく株主視点での投資対効果を表すが、分母が金額ではなく株式数になっている。そう考えると、株式数がどのように変動するのかなど、気になることもあるが、あまり深く考えなくても良いと思う。単純に「一株あたりの利益」である。

PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)

株価をEPSで割ったもので、株主にとっての投資対効果を表す。つまり株価分のお金を投資した時の、効果(EPS)なのだが、そう考えると分母と分子が逆になる気がする。あえてこの分母・分子順になっているということには何か理由があるのだと思うが、まだそのような考察を見かけないため、現時点ではよくわからない。
単純に、数字が大きければEPSに対して株価が割高、という理解で良いと思われる。ただし株価は必ずしも企業の成績で決まるものではない。企業の時価総額を株価×発行済株式総数で計算するのはひとつの考え方だが、これは株式市場のプレイヤーによる評価にすぎないという点に注意したい。市場プレイヤーが必ずしも企業の財務諸表を読み解いて株の売買をするわけではないこと、たとえ全員が財務諸表を読んでいたとしても投資方針は各々異なること、などから、株価(企業の価値)は一意には安定しない。よって、現時点では私は、PERというのは時の情勢に左右されるので、参考にしかならない(参考にもならないかもしれない)と思っている。これを以って株価の割安・割高を論じるのは無謀だと思われる。

ドコモの場合は・・?

さて、ドコモの各指標の数値を考察しよう・・と思ったのだが、これは他社と比較しなければあまり意味が無いため、今回は無し(別の機会)にしたいと思う。長くなるし、表計算ソフトを使って計算させた方が効率的だからである。せっかくの具体例を取り上げたにも関わらず中途半端な説明になり恐縮だが、ご理解いただきたい。本稿は、とりあえずの会計ルールの解説に留める、ということで。

参考

カラー版 会計のことが面白いほどわかる本<会計の基本の基本編>

カラー版 会計のことが面白いほどわかる本<会計の基本の基本編>

財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方 (朝日新書)

財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方 (朝日新書)

BSと同様、詳細はこの2冊で補完することが望ましい。

*1:スクレイピングして表示していると思われるが、数値が無かったか、あるいは取得アルゴリズムのミスか。

*2:利益を出すという目的に於いては