株について1から勉強するブログ

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会計編6:キャッシュフロー計算書

企業の家計簿

さて、貸借対照表(BS)損益計算書(PL)に引き続き、今回はキャッシュフロー計算書(Cash flow Statement、CS)を説明する。これは以前複式簿記と単式簿記の違いを説明した際に、家計簿と同じだと述べた。そのため、直感的に理解できるのではないかと思う。
例によってドコモの例を引用しようと思う。PLの時と同様に銘柄情報-9437:NTTドコモから資料を拝借する。
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キャッシュフローとは

直訳すると、お金の流れである。ここでいうお金とは、現金(または同等物)を指す。よって意訳すると、現金がいくら手元にくる(ある)か、である。色んな文脈で色んな使われ方をするので、なかなか明確な定義をするのが難しい。たとえば買掛金や負債利子を支払う場合、どうしても手元に現金が必要になる。そんなとき、「キャッシュフローが良い方が良い」などと使う。また、お金の価値は現在と将来とで違うという考え方がある(これについては今後の機会にちゃんと説明するが、要は以前説明した話と本質は同じである)。具体的には、現在の100万円と将来の100万円は、現在の方が価値が高い。なぜならば現在の100万円をいますぐ安全な投資(国債など)に回した場合、将来は100万円より多くなっているハズだからである。機会費用という概念が分かるなら、将来まで100万円を使えないことによる機会費用の分、差が出ると考えれば分かりやすい。このような観点から、将来手に入る100万円よりも現在手元にある100万円の方が価値が高いため、受取手形よりも現金の方が価値が高いのである。よって、掛売りするよりも現金売りするほうが「キャッシュフローがよくなる」などと言う。なんとなくイメージが沸いただろうか。
キャッシュフロー計算書(CS)は、決算時点で会社に残存する現金(3ヶ月以内に現金化可能な資産)が手元にいくらあるか、を示している。流動資産が1年であったのに対し、こちらは3ヶ月となっている(よって上の説明とは違い、売掛金などは含まれる場合がある)。

CSはBSとPLを整理したもの

まず、CSの基本的な性質について考えよう。CSは企業の家計簿である。残金がいくらか分かるように計算した帳簿である。
これを、実際に作るとなると、どのように作るだろうか。手っ取り早いのは、現金が出て行った時、逆に入った時、それぞれのタイミングで帳簿記入する方法である。つまり家計簿の書き方である。これを直接法という。しかし企業では、これは大変な手間である。なぜなら現金の出し入れに関わらず、取引の際に複式簿記を使って帳簿記入しているのに、更に現金の出し入れに注目して帳簿をつけなければいけないのだ。これは二重管理になる。よって間接法という、複式簿記の記入結果から逆算して家計簿を作る方法が使われる*1
この間接法というのは、結局のところ、BSとPLの数字をバラして再構築することである。具体的には、PLの当期純利益をベースに、お金が既に出て行っているのに、そのような計上がされていない(減価償却など)場合はその分を引き算をしたり、またはその逆の処理をしたりして、残高を計算する。これが分かっていれば、CSは簡単に理解できる。

3つの観点(回収・投資・調達)

次に、冒頭に引用したドコモのCSを見てみよう。2012年の数字を以下にピックアップした。

当期純利益 463,912 今期のPLから
減価償却 684,783 今期のPLから
営業キャッシュフロー 1,110,559 上記2つ+α。主事業によって増えたお金。
設備投資金額 -717,486 投資キャッシュフローの一部
投資キャッシュフロー -974,585 設備投資+α。投資によって減ったお金。
財務キャッシュフロー -378,616 返済(または資金調達など)によって減った(増えた)お金。
現金の期首残高 765,551 前期のBSから
現金の期末残高 522,078 今期のBSから
キャッシュ・フロー -243,473 上記2つの現金残高の差

キャッシュ・フローは、大きく3つに分類される。営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローである。それぞれ、回収・投資・調達の3つの取引に対応している(企業の取引はこの3つに大別される)。CSからは、この3つの取引それぞれで、手元のお金が増えたか減ったかがわかる。
ドコモの例では、営業CFがプラスなので、主事業によってお金が増えていることが分かる。また投資CFがマイナスなので、何らかの投資をしており、その大部分は設備投資であることがわかる。そして財務CFがマイナスになっているので、負債の返済や自社株買いなどにより、余剰資金を減らしていることが分かる。
この3つを累計して、「キャッシュ・フロー」の数字になる。・・・のだが、上の表の数字では、どうもそうならない。元データを見ていないので理由は分からないが、通常、なる。そしてそれは、BSの資産の部に記載される現金残高の期首・期末の差額と一致する。
ちなみに、企業活動は資金調達→資金の投資→資金の回収→調達または投資→・・・というループである。CSはこの企業活動の流れに忠実に記載されている。つまり、ある期間の活動で、どの程度資金が回収できたか(営業CF)、それをどのように投資したか(投資CF)、その差額をどのように処理したか(財務CF)を表現しているのだ。

CSから分かること

CSは結局、BSとPLのデータを並び替えたものにすぎない。よって、CSを見ることで何か新しいことが分かるかというと、そういうものはない。しかし、現金の動きに注目して整理されているため、CSからの方が読みやすい情報はある。
CSからは、上で述べた回収・投資・調達の3取引の各々の財務状況が分かる。それぞれのCFがプラスかマイナスかに注目すればよい。たとえば営業CFがプラスということは、主事業で収益を上げているということである。また、営業CFと投資CFを見ることで、主事業の収益を使って投資しているのか、借り入れなどを併用して投資しているのかがわかる。ドコモの場合は主事業の収益で投資分を賄っており、さらに余った資金で財務改善を図っており、それによって財務CFがマイナスになっている。これが、たとえば営業CFがマイナスで、投資CFもマイナスである(追加投資をしている)場合、財務CFは大きなプラスになってしまう。つまり借金や株式発行によって新たな資金調達をしたということである。主要事業で赤字が出ているにも関わらず財務CFがプラスになるというのは危険だろう。
と、いうような考察を行う。すなわち、営業CF・投資CF・財務CFのプラスマイナスや大小に注目することで、財務状況(赤字かどうか、事業拡大を狙って投資しているか、借金が増えたかどうか、など)が分かる。

参考

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)

会社法対応 会計のことが面白いほどわかる本<会計基準の理解編>

会社法対応 会計のことが面白いほどわかる本<会計基準の理解編>

https://www.jfc.go.jp/n/finance/keiei/pdf/kei_qa_0804.pdf
最後のPDFは、日本公庫?とやらの資料である。分かりやすいのでおすすめ。

*1:どちらを使ってもよい。